
「電動自転車なのに、ペダルを漕がなくても進む」という製品が通販で売られています。けれども、漕がずにモーターだけで走れる自転車は、法律上は自転車ではありません。原付(ペダル付き電動バイク)として扱われ、免許もナンバーもないまま公道を走ると無免許運転になります。
この記事では、漕がない電動自転車がなぜ違法になるのかを整理し、免許なしで「漕がずに乗りたい」人が選べる合法な乗り物を紹介します。
先に結論
- 電動アシスト自転車は、ペダルを漕ぐ力をモーターが補う乗り物。漕がずに進むものは基準に合わない
- アクセル(スロットル)で走れる「フル電動自転車」「モペット」は、ペダル付き電動バイクとして原付などに当たる。免許・ナンバー・自賠責・ヘルメットが必要
- 無免許で運転すると3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金。2024年11月からは、ペダルだけで走っていても原付の運転に当たることが法律で明確になった
- 免許なしで漕がずに乗りたいなら、特定小型原付(16歳以上・最高20km/h)が合法な選択肢。ナンバーと自賠責は必要
※この記事は2026年10月14日に確認した警察庁・警視庁・国土交通省・国民生活センターなどの公開情報をもとにしています。
電動アシスト自転車は「漕がないと進まない」のが条件
免許なしで乗れる電動アシスト自転車は、道路交通法施行規則第1条の3の基準を満たしたものだけです。基準の中心は「人の力を補うためのモーター」であることで、主な中身は次のとおりです。
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| モーターの役割 | 人がペダルを漕ぐ力を補う(電動機であること) |
| 10km/h未満 | 人の力1に対して、モーターの力は2まで |
| 10〜24km/h | 速度が上がるほど補助を弱め、24km/hで0にする |
| 24km/h以上 | モーターの補助が加わらない |
| 改造 | 基準に合わない状態へ簡単に改造できない構造であること |
補助の比率が決まっている以上、人が漕がなければモーターの力も0です。国民生活センターや警視庁も、ペダルを漕がずにスロットルで加速・走行できるものは基準に合わないと説明しています。
漕がずに走れる自転車は「ペダル付き電動バイク」
アクセルやスロットルでモーターだけで走れる車両は、ペダルが付いていても自転車ではありません。警察は「ペダル付き電動バイク」(以前の呼び方はペダル付き原動機付自転車、通称モペット)と呼び、出力や速度に応じて一般原付や自動車として扱います。通販で「フル電動自転車」と書かれている商品の多くがこれに当たります。
公道を走るのに必要なもの
- 車両の区分に合った運転免許(携帯も必要)
- ナンバープレート(市区町村で登録)
- 自賠責保険への加入
- ブレーキ、前照灯、尾灯、方向指示器、ミラー、警音器などの保安部品
- ヘルメットの着用(一般原付は義務)
走れる場所も車道だけです。自転車のつもりで歩道や自転車専用の通行帯を走ることはできません。
罰則
| 違反 | 罰則 |
|---|---|
| 無免許運転 | 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 自賠責に入らずに運行 | 1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 保安部品がない(整備不良) | 3月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金 |
2025年6月の刑法改正で「懲役」は「拘禁刑」に変わりました。古い解説で「懲役」と書かれているのはこのためです。自賠責に入っていない状態で事故を起こすと、相手への賠償は自分で負うことになります。
「ペダルだけで漕いでいれば自転車」は通らない
モーターを切ってペダルだけで走れば自転車になる、という言い分は認められません。警察庁は以前から、ペダルだけで走らせても原付の運転に当たると解釈してきました。2024年11月1日に施行された改正道路交通法で、このことが条文にはっきり書かれました。
電動アシスト自転車とモペットの見た目や罰則の違いは、電動アシスト自転車とモペットの違いで詳しくまとめています。
「電動アシスト自転車」と書かれていても漕がずに進む製品がある
国民生活センターは2023年10月、ネット通販で「電動アシスト自転車」として売られていた10銘柄をテストしました。結果は、10銘柄中9銘柄で補助の比率が上限を超えていました。うち6銘柄は上限を大きく超え、ペダルを軽く回すだけで20km/hほどまで加速し、24km/hを超えてもモーターが止まりませんでした。10銘柄中5銘柄には届いた状態でスロットルのような装置が付いていました。
基準に合わない車両で公道を走ると、知らずに買った場合でも責任を問われるのは運転した本人です。商品名に「電動アシスト」と書いてあっても安心はできません。

買う前に確かめたいこと
- 型式認定TSマーク:国家公安委員会が基準に合うと認定した車両に付く。警視庁もTSマークのある製品を勧めている
- BAAマーク:自転車協会の安全基準に適合した自転車に付くマーク
- アクセルやスロットルがない:手元のレバーやグリップで加速できる時点で、電動アシスト自転車ではない
- 「漕がなくても進む」「フル電動」「モペット」という広告:免許や登録が必要な車両と考える
今の電動アシスト自転車を漕がずに走れるよう改造するのも違法
手持ちの電動アシスト自転車にスロットルを付けたり、リミッターを外して24km/hを超えても補助が続くようにしたりすると、その時点で基準から外れます。公道を走れば、モペットと同じく無免許運転などに当たります。
どこからが違法になるのか、罰則はどうなるのかは、電動自転車のリミッターカットは違法?改造の罰則/a>で解説しています。
漕がずに乗れる合法な乗り物
免許なしなら特定小型原付

2023年7月に始まった特定小型原動機付自転車(特定小型原付)は、アクセルで走れて運転免許がいりません。主な条件は次のとおりです。
- 16歳以上なら免許なしで運転できる
- 構造上の最高速度は20km/h、モーターの定格出力は0.60kW以下
- 車体は長さ190cm以下、幅60cm以下
- ナンバー(小型の標識)と自賠責保険が必要。ヘルメットは努力義務
- 走るのは原則車道。6km/hに制限できる「特例特定小型原付」に限り、最高速度表示灯を点滅させて一部の歩道を通れる
電動キックボードだけでなく、自転車のような形で座って乗れる車種や、ペダルが付いた車種もあります。ペダル付きでも、車体が特定小型原付の基準と保安基準に合っていれば、特定小型原付として乗れます。ただし自転車ではないので、ペダルを漕いでいても特定小型原付のルールで走ります。詳しくはペダル付き特定小型原付のルールをご覧ください。
自転車のような形の特定小型原付
「漕がずに進む自転車」に近い乗り心地を求めるなら、自転車型の特定小型原付が候補です。価格や在庫は変わるため、購入前に販売ページで型式や保安基準への適合を確認してください。
ママチャリのように使える車種は特定原付ママチャリおすすめ、ほかの形も含めた全機種は特定原付おすすめ比較&全機種一覧で比べられます。
20km/hより速く走りたいなら原付免許を取る
20km/hを超えて走りたい、坂の多い道を速く走りたいなら、原付免許を取ってペダル付き電動バイクや電動スクーターに乗る方法もあります。その場合も、ナンバー、自賠責、ヘルメット、保安部品をそろえれば合法に走れます。
3つの乗り物の違い
| 項目 | 電動アシスト自転車 | 特定小型原付 | ペダル付き電動バイク(モペット) |
|---|---|---|---|
| 漕がずに進むか | 進まない | アクセルで進む | アクセルで進む |
| 運転免許 | 不要 | 不要(16歳以上) | 必要 |
| ナンバー | 不要 | 必要 | 必要 |
| 自賠責 | 不要 | 必要 | 必要 |
| ヘルメット | 努力義務 | 努力義務 | 義務(一般原付) |
| 最高速度 | 補助は24km/hまで | 20km/h | 車両区分による |
| 歩道 | 標識などで認められた場所のみ | 特例の要件を満たす場合のみ | 走れない |
免許の要否をもう少し詳しく知りたい人は、電動アシスト自転車の免許は不要?フル電動との違いも参考にしてください。
よくある質問
- 漕ぎ出しだけ少し漕げば、あとは漕がなくても進む自転車は大丈夫ですか?
- 基準に合いません。電動アシスト自転車は、漕いでいる間だけ決まった比率で補助します。漕ぐのをやめても加速したり走り続けたりする車両は、ペダル付き電動バイクとして扱われる可能性があります。
- 坂道だけアクセルを使うなら問題ありませんか?
- 問題があります。アクセルで走れる構造そのものが電動アシスト自転車の基準から外れます。使う場面を限っても、免許やナンバーがなければ違反です。
- モペットをペダルだけで漕いで走るなら自転車扱いですか?
- 自転車扱いにはなりません。2024年11月1日施行の改正道路交通法で、ペダルだけで走らせる場合も原付などの運転に当たることが明確になりました。
- 私有地なら漕がない電動自転車に乗ってもいいですか?
- 公道ではない私有地での走行に、道路交通法の免許やナンバーの規定は適用されません。ただし、その土地の持ち主の許可が必要で、公道に出た時点で違反になります。
- 通販で買った電動自転車が基準に合っているか分かりません。
- 型式認定TSマークがあるか、スロットルが付いていないかを確認してください。判断できない場合は、販売元に型式認定の有無を問い合わせるか、最寄りの警察署に相談すると確実です。
まとめ
電動アシスト自転車は、漕いだ力をモーターが補う乗り物です。漕がずに進む「フル電動自転車」やモペットは原付などに当たり、免許・ナンバー・自賠責がないまま公道を走れば無免許運転になります。電動アシスト自転車を改造して漕がずに走れるようにした場合も同じです。
免許なしで漕がずに移動したいなら、特定小型原付を選ぶのが合法な方法です。ナンバーと自賠責をそろえれば、16歳以上なら誰でも乗れます。
【2026年10月最新】特定原付おすすめ比較&全機種一覧|着座型・三輪・4輪まで選び方を徹底解説
特定小型原動機付自転車についての外部リンク
特定小型原動機付自転車について
- 特定小型原動機付自転車について(国土交通省)
- 特定小型原動機付自転車について(経済産業省)
- 保安基準に適合した電動キックボード等を購入・使用しましょう(国土交通省)
- 特定小型原動機付自転車ってなに?(PDF)(国土交通省)
- ルールを守って電動キックボードに乗ろう(PDF)(国土交通省)
- 電動キックボード等の概要説明リーフレット(PDF)(警視庁)
特定小型原動機付自転車の交通ルールについて
- 電動キックボードに関する交通ルールを確認しましょう!(政府広報オンライン)
- 電動キックボード等に法改正 乗るならルールを知ってから!(政府広報オンライン)
- 特定小型原動機付自転車に関する交通ルール等について(警視庁)
- 特定小型原動機付自転車に関する交通ルール等について(警察庁)

