
街で電動キックボード(特定原付)を見かけるたびに、「便利そうだけど、なんだか危ないんじゃないか?」と感じている方も多いのではないでしょうか。手軽に乗れる反面、事故のニュースも耳にするため、購入に踏み切れないのも無理はありません。
この記事では、なぜ電動キックボードが「危ない」と言われるのか、その理由をデータと共に徹底的に分析します。さらに、事故を起こしやすい危険な乗り方の特徴を明らかにし、あなたが安心して乗れる「本当に安全な特定原付の選び方」を具体的にお伝えします。
※この記事には広告が含まれています。
- 電動キックボードが危ないと言われる3つの構造的・社会的理由
 - 事故の統計データから見るリアルな危険性
 - 事故る人に共通する危険な乗り方5つの特徴
 - 安全性を劇的に高める特定原付の選び方3つのポイント
 
目次
なぜ電動キックボードは「危ない」と言われるのか?
理由1:車体が不安定で転倒しやすい
電動キックボードが危ないと言われる最大の理由は、その構造にあります。自転車と比較するとタイヤの直径が小さく、わずかな段差や路面の凹凸でもハンドルを取られやすく、バランスを崩しやすいのです。特に、歩道の切り欠きや車道の轍(わだち)は転倒の大きな原因となります。また、重心の位置が高いため、急ブレーキや急ハンドルで不安定になりやすいという特性も持っています。乗り慣れていないうちは、この不安定さが事故に直結する危険性をはらんでいます。
理由2:交通ルールが複雑で認知されていない
2023年7月の法改正により、特定小型原動機付自転車(特定原付)という新しいカテゴリーが生まれました。これにより、16歳以上であれば免許不要で乗れるようになりましたが、ルールは複雑です。車道走行が原則で最高速度20km/h、特定の条件下では歩道も最高速度6km/hで走行可能、二段階右折が必要な交差点があるなど、全てのルールを正確に理解している利用者はまだ少ないのが現状です。このルールの認知不足が、歩行者や他の車両とのトラブルや事故の一因となっています。
理由3:周囲の車や歩行者から認識されにくい
電動キックボードは車体が細く、走行音も静かなため、自動車のドライバーや歩行者から発見されにくいという危険性があります。特に、自動車の死角に入りやすく、左折時の巻き込み事故や、駐車場からの出庫車両との衝突リスクは自転車以上に高いと言えるでしょう。歩行者も背後から静かに接近してくる電動キックボードに気づきにくく、接触事故につながるケースも報告されています。
実際の事故データから見る危険性
警察庁の発表によると、特定原付に関連する人身事故は、制度施行後1年目(2023年7月~2024年6月)の219件から、2年目(2024年7月~2025年6月)には367件へと増加しており、利用者の増加に伴い事故のリスクも高まっていることが示されています(出典:警察庁)。これらのデータは、電動キックボードが都市の交通環境において、新たなリスク要因となっている現実を浮き彫りにしています。
事故の傾向と特徴
- 利用形態:事故の約88%がレンタル車両で発生しています。
 - 発生場所:事故の約73%が東京都内で発生しており、都市部での利用にリスクが集中しています。
 - 事故相手:最も多いのは四輪車との事故(約37%)で、出会い頭の衝突が多発しています。次いで単独事故、自転車、歩行者と続きます。
 - 危険な運転:飲酒運転による事故の割合が、自転車や一般原付に比べて極めて高い水準(約18%)にあります。特に深夜から早朝にかけての飲酒事故が多発している点が問題視されています。
 - 主な違反:検挙される違反で最も多いのが通行区分違反(歩道走行など)で約6割、次いで信号無視が約2割を占めています。
 
出典
事故る可能性大!電動キックボードの危険な乗り方5選
「危ない」と言われる背景には、車両の特性だけでなく、利用者の乗り方にも大きな問題があります。ここでは、事故に直結する危険な乗り方の特徴を5つ挙げます。自分に当てはまらないか、チェックしてみてください。
1. ルールを理解せず自己流で運転する
最も危険なのが、交通ルールを曖昧にしか理解せず、自己流で運転することです。「車道を走るのが怖いから」と安易に歩道を走行したり、二段階右折の標識を無視して小回りで右折したりする行為は、重大な事故の原因となります。免許が不要になったからこそ、利用者一人ひとりが自主的にルールを学び、遵守する責任があります。ルールを知らないことは、自分だけでなく周囲の人々を危険に晒す行為だと認識すべきです。
2. 歩道の段差や車道の轍(わだち)を軽視する
前述の通り、電動キックボードは路面状況の影響を非常に受けやすい乗り物です。特に、タイヤ径の小さいモデルで歩道と車道の間の数センチの段差を斜めに乗り越えようとすると、ハンドルが取られて簡単に転倒します。また、雨の日のマンホールや白線、濡れた落ち葉なども非常に滑りやすく危険です。路面の状況を常に注意深く確認し、危険な箇所では速度を落とす、あるいは一度降りて通過するなどの慎重さが求められます。
3. ヘルメットを着用しない
特定原付のヘルメット着用は「努力義務」であり、罰則はありません。しかし、これは「被らなくても良い」という意味ではありません。万が一転倒した場合、頭部を強打するリスクは自転車よりも高いと言えます。JAFの衝突実験でも、ヘルメットの重要性が示されています。自分の命を守るため、そして万が一の際に後遺症のリスクを減らすためにも、ヘルメットの着用は必須と考えるべきです。より詳しい情報は、こちらの記事で解説しています。
4. スピードの出しすぎ・急な操作
最高速度20km/hは、想像以上に速いスピードです。見通しの悪い交差点や、人通りの多い場所でスピードを出すのは非常に危険です。また、急ブレーキ、急ハンドル、急な進路変更は車体のバランスを崩す最大の原因です。常に周囲の状況を予測し、「かもしれない運転」を心がけ、時間と心に余裕を持ったスムーズな操作を徹底することが、事故を防ぐ上で最も重要です。
5. 車両の点検を怠る
手軽な乗り物だからこそ、日々のメンテナンスを怠りがちです。特に重要なのが「ブレーキの効き」と「タイヤの空気圧」です。ブレーキの効きが悪いと、いざという時に止まれず重大な事故につながります。また、タイヤの空気圧が適正でないと、走行が不安定になったり、パンクの原因になったりします。乗車前には必ずブレーキとタイヤの状態を確認する習慣をつけましょう。
もう危ないと言わせない!安全な特定原付の選び方3つのポイント
危険な乗り方をしないことはもちろんですが、そもそも「転倒しにくい、安定した車体」を選ぶことが安全への第一歩です。ここでは、スペック表を見る際にチェックすべき3つの重要なポイントを解説します。
ポイント1:タイヤは「10インチ以上の大径・空気タイヤ」を選ぶ
安定性を左右する最も重要なパーツがタイヤです。タイヤ径が大きければ大きいほど、段差を乗り越える能力が高くなり、走行安定性が増します。最低でも「10インチ以上」のモデルを選びましょう。また、タイヤの種類は、固いゴムでできた「ソリッドタイヤ」よりも、中に空気の入った「空気タイヤ(チューブタイヤやチューブレスタイヤ)」がおすすめです。空気のクッションが路面からの衝撃を吸収し、乗り心地が良く、グリップ力も高いため、より安全な走行が可能です。
ポイント2:「サスペンション付き」で衝撃を吸収
サスペンションは、路面からの衝撃を吸収してくれるバネのようなパーツです。これがあることで、タイヤだけでは吸収しきれない大きな衝撃を和らげ、車体の跳ね上がりを防ぎ、安定した走行を助けてくれます。特に、前輪と後輪の両方にサスペンションが付いている「デュアルサスペンション」のモデルは、快適性と安全性が格段に向上します。日本の道路は必ずしも平坦ではないため、サスペンションの有無は重要な選択基準です。
ポイント3:「ディスクブレーキ」搭載でしっかり止まる
安全の基本は「止まる」ことです。電動キックボードのブレーキにはいくつか種類がありますが、最も制動力が高く、雨天時でも性能が落ちにくいのが「ディスクブレーキ」です。安価なモデルではドラムブレーキや電動ブレーキのみの場合もありますが、安全を最優先するなら、少なくとも後輪、できれば前後輪にディスクブレーキを搭載したモデルを選びましょう。いざという時に、数メートルの制動距離の差が事故を防ぎます。
安全性を重視するあなたにおすすめの特定原付3選
上記の「安全な選び方3つのポイント」を踏まえ、数ある特定原付の中から、特に安定性と安全性が高いと評価できる3モデルを厳選しました。
1. YADEA KS6 PRO:大径タイヤとサスペンションの王道モデル
「YADEA KS6 PRO」は、まさに安全性を重視する方のための王道モデルです。安定性の高い10インチの耐パンク加工エアタイヤと、フロントサスペンションを搭載し、路面の凹凸をしっかり吸収します。ブレーキも前輪がドラム、後輪がディスク+電動と、制動力も十分。パワフルなモーターで坂道にも強く、通勤から休日の移動まで、あらゆるシーンで安定した走りを提供してくれます(出典:YADEA公式サイト https://yadea.jp/lineup/301/)。
2. E-KON City:長距離も安心!安定性抜群のデュアルディスクブレーキ
「E-KON City」の魅力は、なんといってもその圧倒的な航続距離と安全性です。最大80kmという長距離走行が可能で、バッテリー切れの心配を軽減します。足元は10インチのチューブレスエアタイヤ、そしてブレーキは前後輪ともにディスクブレーキを採用しており、急な下り坂でも安心感のある制動力を発揮します。毎日の通勤距離が長い方や、週末に長距離の移動を楽しみたい方に最適な一台です(出典:E-KON公式サイト https://www.e-kon.jp/products/e-kon-city)。
3. カーメイト e-FREE 01:自転車感覚で乗れる究極の安定性
「どうしても立ち乗りは不安…」という方には、自転車タイプの「カーメイト e-FREE 01」がおすすめです。14インチという大きなタイヤとサドルに座る乗車スタイルは、キックボードタイプとは一線を画す圧倒的な安定感を誇ります。前後ディスクブレーキはもちろん、バッテリーが着脱式で室内で充電できるなど、利便性も高いのが特徴。カー用品の老舗メーカーが開発したという信頼性も大きな魅力です(出典:カーメイト公式サイト https://lps.carmate.co.jp/lp/e-free/)。
特定原付の安全性に関するよくある質問(FAQ)
Q. 雨の日でも乗れますか?
A. 基本的に、雨の日の走行は推奨されません。路面が滑りやすくなり、ブレーキの制動距離も長くなるため、転倒やスリップのリスクが大幅に高まります。また、多くの電動キックボードは完全防水ではなく、電子部品が故障する原因にもなります。どうしても乗る必要がある場合は、防水性能(IP等級)の高いモデルを選び、速度を十分に落として慎重に運転してください。詳しくは以下の記事で解説しています。
Q. 電動キックボードによる死亡者数は?
A. 2025年10月28日現在、警察庁の最新データ(令和7年9月時点)によると、特定小型原動機付自転車(特定原付)の死亡者数は累計で2名です。制度施行後1年目(2023年7月~2024年6月)の死者数は0名でしたが、2年目(2024年7月~2025年6月)に2名の死亡事故が報告されました。なお、死亡または重傷に至る事故の割合(死亡重傷率)は約9.5%で、これは自転車事故の割合とほぼ同水準です(出典:警察庁)。便利な乗り物である一方、一歩間違えれば命に関わる事故につながるという認識を持つことが重要です。
Q. ヘルメットなしは違反ですか?
A. 2023年7月1日以降、特定小型原動機付自転車に分類される電動キックボードのヘルメット着用は「努力義務」とされています。これにより、着用していなくても交通違反として取り締まられることはありません。しかし、努力義務とは「着用に努めなければならない」という意味です。万が一の事故の際に頭部を守る最も重要な防具ですので、安全のために必ず着用しましょう。
まとめ
電動キックボードが「危ない」と言われる背景には、車体の構造的な不安定さ、複雑な交通ルール、そして一部の利用者の危険な運転があります。しかし、これらのリスクは、正しい知識を持つことで大きく減らすことができます。
- 事故る人の特徴を避け、常に安全運転を心がける。
 - 「10インチ以上の空気タイヤ」「サスペンション」「ディスクブレーキ」を基準に、安定性の高い車体を選ぶ。
 
この2点を守ることで、電動キックボードは「危ない乗り物」から「安全で便利な移動手段」に変わります。この記事で紹介した選び方やおすすめモデルを参考に、あなたの新しい相棒を見つけて、安全で快適なモビリティライフを始めてください。
特定小型原動機付自転車についての外部リンク
特定小型原動機付自転車について
- 特定小型原動機付自転車について(国土交通省)
 - 特定小型原動機付自転車について(経済産業省)
 - 保安基準に適合した電動キックボード等を購入・使用しましょう(国土交通省)
 - 特定小型原動機付自転車ってなに?(PDF)(国土交通省)
 - ルールを守って電動キックボードに乗ろう(PDF)(国土交通省)
 - 電動キックボード等の概要説明リーフレット(PDF)(警視庁)
 
特定小型原動機付自転車の交通ルールについて
- 電動キックボードに関する交通ルールを確認しましょう!(政府広報オンライン)
 - 電動キックボード等に法改正 乗るならルールを知ってから!(政府広報オンライン)
 - 特定小型原動機付自転車に関する交通ルール等について(警視庁)
 - 特定小型原動機付自転車に関する交通ルール等について(警察庁)
 




