
特定原付(特定小型原動機付自転車)を公道で走らせるには、自賠責保険への加入が法律で義務付けられています。では、任意保険はどうでしょうか。
「義務ではないなら入らなくていいのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、自賠責保険だけでは補えないリスクが複数あります。相手の物への損害、自分自身のケガ、高額な賠償請求 — これらは任意保険なしでは全額自己負担です。
この記事では、特定原付の保険について以下の点を整理します。
- 自賠責保険と任意保険で補償範囲がどう違うか
- 特定原付に使える任意保険の種類(バイク保険・ファミリーバイク特約)
- 費用の目安と各保険の特徴
- 自分の状況に合った選び方と加入窓口
特定原付の免許・ルールを徹底解説|2026年最新の歩道・罰則
自賠責保険は加入必須 — まず確認すべき前提
特定原付を公道で走行する場合、自動車損害賠償保障法により自賠責保険への加入が義務付けられています。未加入のまま運転すると「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」の対象になります。また、自賠責保険の加入後に交付される保険標章(ステッカー)をナンバープレートの定位置に貼ることも義務です。
2024年4月、特定原付専用の自賠責保険区分が新設されました。一般原付より保険料が安く設定されており、2025年度も料金は据え置きです(※2026年6月時点の情報)。
| 契約期間 | 保険料 | 1年あたり換算 |
|---|---|---|
| 12ヶ月 | 6,650円 | 6,650円 |
| 24ヶ月 | 8,040円 | 4,020円 |
| 36ヶ月 | 9,400円 | 3,133円 |
| 48ヶ月 | 10,730円 | 2,683円 |
| 60ヶ月 | 12,040円 | 2,408円 |
※出典:損害保険会社各社・損害保険料率算出機構(2024年4月1日以降始期契約) ※情報は記事執筆時点のものです
長期契約にすると1年あたりのコストが大きく下がります。12ヶ月契約(6,650円)と5年契約(1年あたり約2,408円)では3倍近い差があるため、長く乗り続ける予定なら長期契約がお得です。
特定小型原付 自賠責保険の加入方法|料金・罰則を徹底解説【2026年】
自賠責保険だけではカバーできない損害
自賠責保険が補償するのは「相手(被害者)の人身損害のみ」です。補償にも上限があり、以下の損害はまったくカバーされません。
補償されない主な損害:
- 相手の車両・建物・物品への損害(対物賠償)
- 自分自身のケガや死亡(自損事故・自分の過失が大きい事故)
- 自分の特定原付の損害(車両損害)
自転車事故でも1億円近い損害賠償が認められた事例があります。特定原付は公道を走る乗り物である以上、こうしたリスクへの備えが必要です。
任意保険が必要な理由
任意保険への加入は義務ではありません。ただし加入しない場合、次のリスクが自己負担になります。
① 対物賠償リスク
相手の車に傷をつけたり、店舗の壁に衝突したりした場合の損害は全額自己負担です。高級車への衝突や商業施設への被害では、賠償額が数百万円になることがあります。
② 自分のケガのリスク
自損事故や自分の過失が大きい事故では、自賠責保険で自分自身のケガは補償されません。入院費・治療費が自己負担になります。
③ 示談交渉のサポートがない
任意保険には示談交渉サービスが付帯していることが多く、相手との交渉を保険会社が代行します。無保険の場合は自力での対応が必要です。
④ 自賠責の対人補償が不足する場合
自賠責保険の対人補償には上限があります(傷害:最高120万円、後遺障害:最高4,000万円、死亡:最高3,000万円)。重大な事故では補償が不足し、差額は自己負担になります。
日本電動モビリティ推進協会(JEMPA)も、こうした理由から特定原付への任意保険加入を推奨しています(出典:JEMPA公式サイト 任意保険ページ)。
特定原付で使える任意保険の種類
特定原付に対応する任意保険は主に2種類あります。既存の自動車保険があるかどうかで、選択肢が変わります。
バイク保険(単独で加入するタイプ)
バイク保険(自動二輪・原動機付自転車保険)に原付区分として加入する方法です。損保ジャパン・三井ダイレクト損保など複数の保険会社が、特定原付をバイク保険の対象として取り扱っています。
主な補償内容:
| 補償 | 内容 |
|---|---|
| 対人賠償 | 相手のケガ・死亡に対する賠償(無制限設定可) |
| 対物賠償 | 相手の車両・建物等への損害賠償 |
| 人身傷害保険 | 自分のケガを実費ベースで補償 |
| 搭乗者傷害特約 | 乗車中のケガを定額で補償 |
| 車両保険 | 自分の特定原付の損害(会社による) |
バイク保険には「等級制度」が適用されます。初回契約は6等級(S)からスタートし、無事故で更新するたびに等級が上がり保険料が下がります。逆に事故を起こすと等級が下がり、保険料が上昇します。
ファミリーバイク特約(自動車保険の特約として加入するタイプ)
自動車保険に加入している場合、その特約として「ファミリーバイク特約」を追加する方法があります。損保ジャパン・三井ダイレクト損保・三井住友海上など主要保険会社が、特定原付をファミリーバイク特約の補償対象に含めています(出典:各社FAQ・公式ページ)。
特約なので別途バイク保険に加入する必要がなく、追加保険料のみで補償を追加できます。また、所有・借用を問わず原動機付自転車であれば台数に制限なく補償されるため、複数台を使い回す場合に有利です。
ファミリーバイク特約の2タイプ:
ファミリーバイク特約には2つのタイプがあり、保険会社によって選べる内容が異なります。
| タイプ | 自損事故型 | 人身傷害型 |
|---|---|---|
| 相手のある事故(自分のケガ) | 補償なし | 補償あり |
| 自損事故(自分のケガ) | 補償あり | 補償あり |
| 保険料 | 低め | 高め |
自損事故型は保険料が低い反面、相手のある事故で自分がケガをした場合には補償されません。走行リスクが高いと感じる方は人身傷害型を選ぶほうが安心です。
ファミリーバイク特約の注意点:
- ロードサービスが付帯しないことが多い(遠出する場合はJAF等の別途手配が必要)
- 等級制度がないため、事故を起こしても翌年の主契約の等級には影響しない(ただし保険会社によって扱いが異なる)
- 自動でセットされる特約ではないため、自動車保険契約時または更新時に申し込む必要がある
自転車保険は特定原付に使えない
「自転車保険でカバーできないか」と考える方もいますが、特定原付は自転車保険の補償対象外です。個人賠償責任保険の約款では「自動車・自動二輪車の所有・使用による損害賠償責任」は除外されており、電動で走る特定原付もこの除外に該当します(出典:各保険会社公式ページ)。
自転車保険はあくまで人力で走る自転車用と考えてください。
保険料の目安と費用比較
バイク保険(単独)の保険料目安
バイク保険の保険料は年齢・等級・補償内容によって大きく変わります。三井ダイレクト損保が公開している電動キックスクーター向けバイク保険の価格例(2026年6月時点)は以下のとおりです。
| プラン | 21歳以上限定 | 年齢を問わず |
|---|---|---|
| 基本補償(対人・対物) | 10,870円/年 | 38,110円/年 |
| 充実補償(+搭乗者傷害200万円) | 18,640円/年 | 48,720円/年 |
※出典:三井ダイレクト損保 電動キックスクーター向けバイク保険 ※情報は記事執筆時点のものです
21歳以上に限定すると保険料を大幅に抑えられます。16歳以上が対象となる特定原付の性質上、16〜20歳の方を含める場合は「年齢を問わず」プランを選ぶ必要があります。
参考として、インズウェブが公開する原付向けバイク保険の相場(2025年4月〜2026年3月利用者)では、初年度6等級で約64,533円/年、20等級まで無事故で更新すると約19,640円/年という目安があります(出典:インズウェブ)。保険会社・補償内容により数値は異なります。
ファミリーバイク特約の保険料目安
ファミリーバイク特約は自動車保険の主契約に上乗せする形式のため、追加保険料は保険会社・主契約の条件・特約タイプにより異なります。一律の相場を示すことが難しく、加入を検討する際は各保険会社への見積もり依頼が確実です。
ファミリーバイク特約のコスト上の強みは、複数台をカバーできる点です。例えば家族で2台の特定原付を使う場合、バイク保険を2本契約するより、1本の自動車保険にファミリーバイク特約を追加するほうが割安になるケースがあります。
保険タイプ別の比較まとめ
| 比較項目 | バイク保険(単独) | ファミリーバイク特約 |
|---|---|---|
| 加入条件 | 誰でも加入可 | 自動車保険に加入済みが前提 |
| 等級制度 | あり(無事故で保険料が下がる) | なし |
| 対人・対物補償 | あり | あり(主契約に連動) |
| 自分のケガの補償 | プランによる | タイプにより異なる |
| ロードサービス | 会社により付帯 | 多くの場合は対象外 |
| 複数台の補償 | 台数分の契約が必要 | 1特約で複数台対応 |
| 保険料の目安 | 1万円台〜(21歳以上・基本補償) | 主契約への追加料金 |
【2026年最新】特定原付の維持費は年間2〜4万円台 電動キックボードの税金・保険・電気代を徹底解説
状況別の保険選び
自動車保険に加入済みの場合
まずファミリーバイク特約の追加を検討してください。現在の自動車保険に特約を追加するだけで対人・対物の補償が得られ、手続きも比較的簡単です。自分のケガをしっかりカバーしたい場合は「人身傷害型」を選んでください。
ただし、ファミリーバイク特約ではロードサービスが受けられないことが多いため、遠出が多い方はバイク保険(単独)の方が安心かもしれません。各社への問い合わせで特約内容を確認してから判断してください。
自動車保険に加入していない場合
バイク保険(単独)への加入が基本の選択肢です。補償内容・保険料を複数社で比較し、自分の利用状況に合ったプランを選んでください。
一括見積もりサービス(インズウェブ等)を利用すると、複数社の保険料を一度に比較できます。
家族で複数台を使う場合
ファミリーバイク特約は1つの特約で複数台の原付をカバーできます。家族内で複数台の特定原付を使い回す場面が多い場合は、ファミリーバイク特約がコスト面で有利なケースがあります。
特定原付盗難保険ガイド2026年版|加入できる保険と失敗しない鍵・GPS対策
保険の加入方法
自賠責保険の加入窓口
自賠責保険は以下の窓口で加入できます。
- バイク販売店・カー用品店: 購入時にそのまま手続きできる
- コンビニ(セブン-イレブン・ローソン等): オンライン予約後にレジで支払い、ステッカーを受け取る
- デジタル加入(One-JIBAI): スマートフォン・PCからオンラインで手続き。クレジットカード決済対応、証明書はPDF保管が可能
なお、自賠責証明書は紙の携行が困難な特定原付の場合、スマートフォン等への画像保存(電子保管)が認められています(出典:glafit公式コラム)。走行時は証明書を確認できる状態にしておいてください。
任意保険の加入窓口
バイク保険(単独)の場合:
- 各保険会社のウェブサイトから直接申し込み(ダイレクト型)
- 保険代理店経由での申し込み
- 一括見積もりサービスで複数社を比較してから申し込み
JEMPA(日本電動モビリティ推進協会)は、特定原付の任意保険に対応した保険代理店として丸凡保険サービス株式会社(marubon.online)と提携しており、LINE相談(平日10:00〜17:00、年末年始除く)も受け付けています(出典:JEMPA 任意保険ページ)。
ファミリーバイク特約の場合:
現在加入している自動車保険の保険会社に連絡し、特約の追加を申し込みます。自動でセットされる特約ではないため、必要な場合は自分で申し込む必要があります。
よくある質問
- 任意保険に入らないとどうなりますか?
- 任意保険は法律上の義務ではないため、罰則はありません。ただし、相手の車や建物への損害・自分自身のケガ・高額の賠償請求が生じた場合はすべて自己負担になります。
- バイク保険とファミリーバイク特約、どちらが良いですか?
- 自動車保険に加入済みであれば、まずファミリーバイク特約の追加を検討するのが手軽です。自動車保険がない場合や、ロードサービスが必要な場合はバイク保険(単独)が選択肢になります。どちらが得かは補償内容・使用頻度・台数により異なるため、見積もりを比べて判断してください。
- 特定原付の任意保険料はいくらですか?
- バイク保険(単独)の場合、21歳以上向けの基本プランで年間1万円台から加入できます(例:三井ダイレクト損保 10,870円/年)。年齢条件なしのプランや充実補償プランは保険料が大きく上がります。ファミリーバイク特約は主契約への追加料金のため、各保険会社への見積もり確認が必要です。
- 自転車保険は特定原付に使えますか?
- 使えません。自転車保険(個人賠償責任保険)の約款では、電動で走る特定原付は補償対象外とされています。特定原付に使える任意保険は、バイク保険またはファミリーバイク特約のいずれかです。
- シェアリングサービス(LUUPなど)で借りる場合は保険加入が必要ですか?
- シェアリングサービスは事業者が自賠責保険に加入しており、多くのサービスで利用者向けの損害補償も用意されています。ただし補償内容や上限は事業者ごとに異なるため、利用前に各サービスの補償内容を確認してください。自分で購入した特定原付への保険加入は別途必要です。
まとめ
特定原付の任意保険は義務ではありませんが、自賠責保険だけでは対物・自身のケガ・高額賠償に対応できません。
選択肢は主に2つです。
- バイク保険(単独): 誰でも加入でき、等級制度で長期的に保険料が下がる
- ファミリーバイク特約: 自動車保険があれば追加するだけ。複数台も1特約で対応
どちらも対人・対物の賠償補償を基本に持ち、自分のケガへの備えはプランやタイプで選択できます。
まず現在の自動車保険加入状況を確認し、ファミリーバイク特約が使えるかどうかを保険会社に問い合わせるところから始めると判断しやすいです。自動車保険がない場合は、複数社の見積もりを比較してバイク保険を選んでください。
※本記事の保険料・補償内容は2026年6月時点の情報です。最新情報は各保険会社の公式サイトまたは代理店でご確認ください。
【2026年9月最新】特定原付おすすめ比較&全機種一覧|着座型・三輪・4輪まで選び方を徹底解説
特定小型原動機付自転車についての外部リンク
特定小型原動機付自転車について
- 特定小型原動機付自転車について(国土交通省)
- 特定小型原動機付自転車について(経済産業省)
- 保安基準に適合した電動キックボード等を購入・使用しましょう(国土交通省)
- 特定小型原動機付自転車ってなに?(PDF)(国土交通省)
- ルールを守って電動キックボードに乗ろう(PDF)(国土交通省)
- 電動キックボード等の概要説明リーフレット(PDF)(警視庁)
特定小型原動機付自転車の交通ルールについて
- 電動キックボードに関する交通ルールを確認しましょう!(政府広報オンライン)
- 電動キックボード等に法改正 乗るならルールを知ってから!(政府広報オンライン)
- 特定小型原動機付自転車に関する交通ルール等について(警視庁)
- 特定小型原動機付自転車に関する交通ルール等について(警察庁)

