
電動アシスト自転車の回生ブレーキは、減速時や下り坂で車輪が持つ運動エネルギーを電気に変え、バッテリーへ戻す仕組みです。充電の手間や走行距離を抑えられる一方、どれだけ電気を回収できるかは、道の勾配や乗り方、機種の制御で変わります。
「回生充電なら1,000km走れる」といった公表値もありますが、日常の道路で必ず同じ距離を走れるという意味ではありません。対応モデルと測定条件を確認して、自分の通勤・買い物ルートで役立つかを判断しましょう。
先に確認したい要点
- 回生ブレーキは減速と充電を同時に行う機能。通常のブレーキの代わりにはならない
- 現行の対応例は、ブリヂストンのDUAL DRIVEと、太陽誘電のFEREMO搭載車
- 走行距離の公表値は試験条件に基づく目安で、実走行では変わる
- パナソニックは過去に回生充電モデルを販売している。各社が現在採用しない理由は公表情報だけでは断定できない
- 一般車に回生機能だけを付けることはできず、モーター・制御器・バッテリーを含めた対応システムが必要
電動アシスト自転車の回生ブレーキの仕組み

車輪の回転を電気に戻す
電動アシスト自転車が走るときは、バッテリーからモーターに電力を送り、ペダルを踏む力を補います。ブレーキや下り坂で車輪が回り続けているとき、モーターの制御を切り替えると、モーターが発電機として働きます。
発生した電力をバッテリーに蓄える動作が「回生充電」です。同時に、発電機を回す抵抗が車輪にかかるため、自転車の速度が落ちます。この減速作用を「回生ブレーキ」や「モーターブレーキ」と呼びます。
回生ブレーキと回生充電は別々の機能ではなく、ひとつの動作の「減速」と「電力回収」の面を表しています。ただし、ブレーキレバーの操作で発電するか、ペダルを止めた下り坂などで自動的に発電するかは、車種ごとに異なります。
詳しい基本構造は電動アシスト自転車の仕組みを完全解説でも紹介しています。
通常のブレーキとの違い
一般的な自転車のブレーキは、リムやローターなどを摩擦で押さえて、運動エネルギーを主に熱として逃がします。回生ブレーキは、モーターの抵抗で減速させながら、その一部を電気として回収する点が違います。
回生できる電力量には限りがあり、低速時やバッテリーが満充電に近いときなど、機種の条件によって回生が弱まったり作動しなかったりします。ブリヂストンも、モーターブレーキだけでは停止できず、前後の通常ブレーキを併用するよう案内しています。詳しい作動条件はブリヂストンサイクルのモーターブレーキFAQで確認できます。
回生ブレーキに対応する自転車

2026年9月時点で公式情報から確認できる方式には、ブリヂストンの「DUAL DRIVE(両輪駆動)」と、太陽誘電の「FEREMO」があります。両者とも前輪に発電機能を持つモーターを備えますが、システムや車種、アシストモードの構成は同一ではありません。
| 方式・モデル例 | メーカー公表の1充電あたりの距離目安 | 車体重量 |
|---|---|---|
| カジュナ e(DUAL DRIVE) | エコ200km/オート105km/パワー62km | 28.6kg |
| HYDEE.II(DUAL DRIVE) | エコ185km/オート95km/パワー56km | 31.0kg |
| Re:BIKE(FEREMO) | エコ約1,000km/平坦約500km/パワー約100km | 24.7kg(通常モデル) |
ブリヂストンにはアルベルト eなど、両輪駆動を採用した別モデルもあります。掲載モデルやサイズごとに走行距離と重量が違うため、購入時はモデル名と型番を確認してください。ブリヂストンの両輪駆動モデル一覧では、現行ラインアップと距離の測定条件を確認できます。
FEREMO搭載車はRe:BIKEだけではありません。太陽誘電の公式搭載車一覧には、丸石サイクルのRe:BIKE STERNA、アサヒサイクルのevol GNU、武田産業のrafootとrafoot miniも掲載されています。街乗り向けからスポーツタイプ、小径モデルまで選択肢が広がっています。
Re:BIKEは内装3段変速、スポーツタイプのRe:BIKE STERNAは外装7段変速です。回生機能だけで選ばず、積載性やタイヤ、変速、販売店での修理対応も比べましょう。丸石サイクルの電動アシスト自転車を徹底解説も参考になります。
表の距離は各メーカーが示す標準的な試験条件での目安です。FEREMOの1,000kmはJIS D9115:2018の測定パターンに基づく値で、実際の走行距離を保証するものではありません。モード名や車体が異なる数値を、そのまま倍率で比較しないでください。
パナソニックやヤマハが採用しない理由
「センターモーターだから回生ブレーキは付けられない」と一律に説明するのは正確ではありません。パナソニックは2011年に、下り坂やブレーキ減速時の運動エネルギーを充電に使う「ビビチャージ」シリーズを発売しています。過去の製品と現在の販売モデルは分けて考える必要があります。
2026年9月に公開されているパナソニックの自転車ラインアップとヤマハPASのラインアップでは、回生機能を明記した現行モデルを確認できませんでした。一方、ブリヂストンのFAQは、自社のモーターブレーキをDUAL DRIVE搭載車の機能として案内しています。これは同社の製品仕様であり、あらゆるセンターモーター方式で回生が技術的に不可能という説明ではありません。
回生機能を実用化するには、モーターだけでなく、発電した電気を制御する回路、バッテリーが受け入れられる充電条件、減速時の制動制御も組み合わせる必要があります。メーカー各社が現在の製品で何を優先して回生を採用していないのか、その理由までは公開情報から確認できません。車種ごとの仕様として判断しましょう。
ブリヂストン、パナソニック、ヤマハの得意分野や選び方の違いは、電動アシスト自転車はヤマハとパナソニックどっちがいい?もご覧ください。
回生で走行距離はどれだけ伸びるか
効果の参考になるのが、環境省中国四国地方環境事務所が2022年にしまなみ海道で実施した実証実験です。ブリヂストン製の回生電動アシスト自転車20台を貸し出し、モニターで計測したところ、走行中にアシストへ使った電力量に対して、回生発電量は平均26.5%でした。
ここでいう26.5%は「使った電力量に対する発電量の割合」です。走行距離がそのまま26.5%伸びたという意味ではありません。実証実験のルートには坂道があり、別の地域や平坦な通勤路で同じ割合を期待することもできません。詳しい条件と結果は環境省の実証実験報告で確認できます。
カタログの航続距離も、一定の走行パターンを使った測定値です。荷物と乗員の重さ、坂の長さ、気温、タイヤの空気圧、アシストモードや発進回数などが変われば、実際の距離は短くなります。200kmや1,000kmという数字は、同じ距離を誰でも走れるという約束ではなく、モデルや試験条件をそろえて読むための基準です。
回生ブレーキのメリットと注意点
坂道や長距離走行で充電の手間を減らせる
上り坂で使った電力の一部を、下り坂や減速時に取り戻せるのが回生の利点です。長い下り坂がルートにある人や、充電できる場所が限られる長距離ライドでは、通常のブレーキだけの自転車より充電頻度を抑えられる可能性があります。
ただし回生は、乗車中に使ったエネルギーをすべて取り戻す仕組みではありません。平坦路で短距離を走り、速度をあまり落とさない使い方では、充電量が大きくなりにくいでしょう。走行距離だけを見て「回生付きなら充電は不要」と考えるのは避けてください。
下り坂で速度を抑えるが通常ブレーキも必要
一部の機種では、ペダルを止めて速度が上がったときやブレーキ操作時にモーターブレーキが働きます。長い下り坂で速度を抑える助けにはなりますが、路面や速度、バッテリーの状態によって制動力は変わります。
回生ブレーキに頼って止まらず、前後のブレーキを使ってください。ブリヂストンの現行FAQでは、バッテリーが満充電のときや内部温度が著しく高い・低いときは、回復充電が作動しないと説明しています。低速・高速時にもモーターブレーキが弱くなる場合があります。詳しい条件は車種ごとの取扱説明書で確認しましょう。
車体の重さや用途も比べる
回生対応車の重量は車種ごとに違います。たとえばカジュナ eは28.6kg、子ども乗せ対応のHYDEE.IIは31.0kg、Re:BIKEは24.7kgです。回生機能の有無だけでは重さを判断できません。駐輪場の段差や階段で車体を持ち上げるなら、購入前に販売店で取り回しを試してください。
初期費用や修理のしやすさもモデルごとに異なります。回生機能のために払う差額だけを計算するより、バッテリー容量、車体重量、変速、かごやチャイルドシート、近くの修理店まで含めて比べるほうが、日常の使い勝手を判断できます。
なお「回生によってバッテリー劣化が必ず早まる」とは言い切れません。充電制御は車種やバッテリーによって異なるため、寿命に関する一律の説明ではなく、メーカーの保証と取扱説明書を確認してください。

回生ブレーキが向いている人
次のような使い方なら、回生による発電と速度制御を活かしやすくなります。
- 丘陵地や坂道の多い住宅地を日常的に走る
- 長い下り坂がある通勤・通学路を走る
- 片道の距離が長く、バッテリーの充電頻度を下げたい
- 自転車で遠出をするため、充電場所を気にせず移動したい
反対に、平坦な道で短距離を移動するだけなら、回生機能にこだわる必要はありません。車体が重く感じるか、通常モデルとの価格差を払う価値があるかは、実物の試乗で確かめてください。坂道の負担やアシストの感じ方は電動アシスト自転車は上り坂でどれくらい楽?でも解説しています。
まとめ
電動アシスト自転車の回生ブレーキは、減速や下り坂で失われる運動エネルギーの一部を電気に戻す機能です。坂道の多いルートや長距離走行では充電回数を減らせる可能性がありますが、カタログの航続距離は試験条件による目安であり、普段の走行距離を保証するものではありません。
現行の対応例は、ブリヂストンのDUAL DRIVEと、複数メーカーが採用するFEREMOです。パナソニックも過去には回生充電モデルを販売していました。回生が必要かどうかは、坂道の有無、走行距離、車体重量、価格、販売店でのサポートを合わせて決めましょう。
回生充電に対応しているか、何km走れるかを購入前にメーカーの車種別ページで確認し、販売店でブレーキの感触や取り回しを試すと安心です。
用途別の候補を広く比べる方は、次の記事も参考になります。
【2026年版】電動アシスト自転車おすすめ12選|用途別・メーカー別の選び方ガイド
よくある質問
- 一般的な自転車に回生ブレーキを後付けできますか?
- ブレーキだけを交換して回生機能を追加することはできません。対応するモーター、制御器、バッテリーを組み合わせた電動アシストシステムが必要です。後付け用の電動化キットを検討する場合も、対応する車体や公道で使うための条件をメーカーに確認してください。
- 回生ブレーキがあれば普通のブレーキは不要ですか?
- いいえ。回生ブレーキの制動力は速度やバッテリーの状態で弱まる場合があり、単独では停止できません。前後の通常ブレーキを使い、車種の取扱説明書に従ってください。
- 回生充電で本当に1,000km走れますか?
- 1,000kmはFEREMO搭載車のメーカーが標準測定パターンで示すエコモードの目安です。坂道、荷物、気温、モードなどの条件によって実際の距離は変わるため、日常の走行距離として保証される数字ではありません。
- パナソニックやヤマハの自転車には回生モデルがないのですか?
- パナソニックは2011年に、回生充電機能を搭載したビビチャージを発売しました。2026年9月に公開中の公式ラインアップでは回生機能を明記した現行モデルを確認できませんが、各社の採用理由までは公表情報から判断できません。
- FEREMOを搭載した自転車はどれですか?
- 太陽誘電の公式一覧には、丸石サイクルのRe:BIKEとRe:BIKE STERNA、アサヒサイクルのevol GNU、武田産業のrafootとrafoot miniが掲載されています。最新の販売モデルや仕様はメーカーの製品ページで確認してください。

