
「パーソナルモビリティ」という言葉、最近よく耳にしませんか?電動キックボードや未来的なデザインの乗り物を見て、「あれがそうなのかな?」と思いつつも、具体的にどんなもので、私たちの生活とどう関わってくるのか、詳しくは知らない方も多いかもしれません。特に2025年の大阪・関西万博での活用が発表され、その注目度はますます高まっています。
この記事では、そんなパーソナルモビリティの世界を、法律や専門知識に精通したプロのライターが徹底的に掘り下げます。単なる言葉の意味だけでなく、具体的な種類、注目の「特定小型原動機付自転車(特定原付)」との関係、そして未来の可能性まで、あなたの疑問にすべてお答えします。
※この記事には広告が含まれています。
目次
この記事の要点まとめ
- パーソナルモビリティは、個人が使う小型の電動移動手段の総称。
- 電動キックボード(特定原付)や電動車椅子、シニアカーなど様々な種類がある。
- 高齢者の移動支援や、未来の移動手段として期待されている。
- 利用には道路交通法などのルール理解が不可欠で、安全性が最も重要。
パーソナルモビリティとは?その定義をわかりやすく解説
「個人の移動」を支える新しい乗り物の総称
パーソナルモビリティとは、その名の通り「個人的な(Personal)」移動(Mobility)のための乗り物を指す言葉です。明確な法的定義はまだ確立されていませんが、一般的に「1~2人乗りの小型電動ビークル」を指す概念として使われています。特に、WHILL社のコラムなどでも言及されているように、従来の自動車やバイクよりもコンパクトで、環境負荷が低いのが大きな特徴です。私たちは、自宅から駅まで、最寄り駅から目的地までといった「ラストワンマイル」の移動を快適にすることを目的としています。
- 動力: 主に電動モーター
- サイズ: 小型で軽量 定員: 1~2人乗り
- 目的: 歩くには少し遠い、近距離の移動
このパーソナルモビリティという大きな枠組みの中に、後述する電動キックボードや電動車椅子などが含まれています。これらの乗り物は、個人の生活圏内での移動の自由度を大きく高めるポテンシャルを秘めています。
マイクロモビリティや電動モビリティとの違い
パーソナルモビリティと似た言葉に「マイクロモビリティ」や「電動モビリティ」があります。これらの関係性を理解すると、よりイメージが掴みやすくなります。これらの用語はしばしば混同されますが、指し示す範囲が異なります。
- 電動モビリティ: 電気で動く乗り物全般を指す最も広い言葉です。電気自動車(EV)から電動アシスト自転車、パーソナルモビリティまで、すべてが含まれます。
- マイクロモビリティ: 電動モビリティの中でも、特に小型で近距離移動に使われるものを指します。電動キックボードや小型EVなどがこれにあたります。産総研もこの定義に近い説明をしています(出典:産総研マガジン)。
- パーソナルモビリティ: マイクロモビリティとほぼ同義で使われることが多いですが、「個人」の利用、特に移動の自由度向上に焦点が当てられた言葉です。
つまり、「電動モビリティ」という大きな円の中に「マイクロモビリティ」があり、その中でも特に個人の利用を想定したものが「パーソナルモビリティ」と呼ばれる、とイメージすると分かりやすいでしょう。より詳しい関係性については、以下の記事で解説しています。
なぜ今、パーソナルモビリティが注目されるのか?
パーソナルモビリティが世界的に注目を集める背景には、現代社会が抱えるいくつかの構造的な課題があります。
- 超高齢社会への対応: 免許を返納した高齢者や、長距離の歩行が困難な方々の「移動の足」として、シニアカーや電動車椅子といったパーソナルモビリティへの期待が高まっています。移動の自由がQOL(生活の質)に直結するため重要です。
- 環境問題への意識向上: CO2を排出しない電動のパーソナルモビリティは、脱炭素社会の実現に貢献するクリーンな移動手段として注目されています。
- 都市部の交通課題: 交通渋滞や駐車場不足が深刻な都市部において、小回りが利くパーソナルモビリティは効率的な移動手段となり得ます。
- MaaS(Mobility as a Service)の普及: 電車やバスなどの公共交通と、シェアサイクルや電動キックボードのようなパーソナルモビリティをシームレスに連携させることで、移動全体の利便性を向上させる取り組みが進んでいます。
【種類別】あなたの知らないパーソナルモビリティの世界
パーソナルモビリティと一言で言っても、その種類は多岐にわたります。ここでは代表的なタイプを、今話題の「特定原付」との関連も交えてご紹介します。
立ち乗り型:電動キックボード(特定原付)、セグウェイなど
街中で見かける機会が最も増えたのが、この立ち乗り型でしょう。特に電動キックボードは、2023年7月の道路交通法改正で「特定小型原動機付自転車(特定原付)」という新しい区分が設けられ、16歳以上であれば免許不要で運転できるようになったことで、一気に身近な存在になりました。この改正により、公道走行のハードルが大きく下がりました(詳細は警察庁の発表をご確認ください)。
特定原付は、最高速度20km/hで車道を走行します。また、最高速度を6km/h以下に設定し、最高速度表示灯を点滅させた「特例特定小型原動機付自転車」の要件を満たすことで、一部の歩道(標識がある場合)も走行可能です。ただし、歩道を通行する際は、歩行者優先で徐行しなければなりません(出典:警察庁)。手軽さと機動力を両立しており、都市部の短距離移動に最適です。
例えばYADEA KS6 PROは、メーカー公称値として1回の充電で最大60km走行可能です。この航続距離は、理想的な条件下で算出されたものであり、実際の利用環境(体重、坂道、加減速の頻度など)により変動することを留意してください。パワフルなモーターを搭載しているため、通勤ルートにある緩やかな坂道もスムーズに登ることができるでしょう。このモデルは、長距離利用を想定しており、充電頻度を減らしたい方に適しています。
特定原付について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
座り乗り型:電動車椅子、シニアカー、特定原付(自転車タイプ)
座って安定した姿勢で移動できるのが、座り乗り型の特徴です。高齢者や足の不自由な方の移動を支える重要な役割を担っています。特にシニア層にとっては、転倒リスクが低く、安定した運転が可能なため、非常に実用的な選択肢となります。
- 電動車椅子・シニアカー: 道路交通法上「歩行者」として扱われるため、主に歩道を走行します。免許は不要で、買い物や通院など、日常生活の様々な場面で活躍しています。
- 特定原付(自転車タイプ・バイクタイプ): 電動キックボードだけでなく、サドルに座って運転する自転車タイプやバイクタイプの特定原付も登場しています。立ち乗りは少し不安という方でも、安定して運転できるのが魅力です。例えばカーメイト e-FREE 01のような自転車タイプは、ペダルを漕ぐ感覚に近い操作感で、長距離の移動でも疲れにくいのが特徴です。
座れるタイプの特定原付は、安定性と快適性を両立した新しい選択肢として、今後さらに普及していくことが予想されます。特に、長距離の移動や、荷物を積みたい場合に、立ち乗りタイプよりも有利になるケースが多いです。
その他:一輪タイプや開発中の未来型モビリティ
上記のほかにも、体重移動で直感的に操縦する一輪タイプのモビリティや、各メーカーが開発を進めている未来的なコンセプトモデルなど、パーソナルモビリティの形は進化を続けています。例えば、トヨタが過去に研究していた「Winglet(ウイングレット)」のように、特定の施設内での利用を想定したモビリティも登場しており、用途に応じた多様化が進んでいます。これらのモデルはまだ公道走行が難しいものが多いですが、未来の移動の可能性を示唆しています。
【2025年】大阪・関西万博のレガシーとしてのパーソナルモビリティ
2025年の大阪・関西万博では、未来の移動手段としてパーソナルモビリティが重要な役割を果たすことが期待されていました。万博は未来の技術を社会実装する大きな機会であり、来場者が実際に体験できる場として注目されていました。ここでは、万博終了後の視点も踏まえ、当時の計画や提供されたサービスについて振り返ります。
Q. 万博で体験できたパーソナルモビリティは何?
万博会場では、来場者の移動を支援するため、多様なパーソナルモビリティが導入されていました。主に、会場内の移動をスムーズにするための立ち乗りタイプや、移動にサポートが必要な方向けの車いすタイプが提供されていました。これらのモビリティは、広大な敷地を快適に散策し、未来の技術を体感するためのツールとして機能しました。また、会場のコンセプトに合わせて、より未来的なコンセプトモデルの展示・体験も行われていた可能性があります。
Q. 料金はかかった?予約は必要だった?
万博の運営方針では、来場者が気軽に未来のモビリティを体験できるよう、会場内の移動支援を目的としたモビリティの利用料金は無料とされていました。また、当日の運用状況によりますが、多くの場合、事前予約は不要で、会場内の専用ポートで受け渡しが行われていました(出典:EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイトの関連情報)。これは、多くの人がストレスなく未来の移動を体験できるようにするための配慮でした。
Q. どこで試乗・レンタルできた?
会場内には専用のポート(貸出・返却拠点)が複数設置され、シェアリングサービスのような形式でモビリティが提供されていました。来場者はこれらのポートでモビリティを受け取り、会場内を移動した後、最寄りのポートに返却するという流れが想定されていました。この体験を通じて、多くの人がパーソナルモビリティの利便性を実感したことでしょう。
※万博に関する情報は過去の計画に基づいています。
パーソナルモビリティの課題と未来
法律・制度の課題(道路交通法など)
パーソナルモビリティ普及の最大の課題は、法律や制度の整備です。特定原付のように新しいルールが作られた一方で、まだ多くのモビリティが公道を走行するには様々な規制があります。国土交通省や警察庁が、どの車両をどのように公道で認めるか、継続的に議論を進めています。特に、電動キックボード以外の新しいタイプのモビリティが市場に登場するたびに、現行法との整合性が問われます。この法整備のスピード感が、社会実装の鍵を握ります。
詳細な交通ルールについては、別記事で詳しく解説しています。
安全性の確保とインフラ整備
新しい乗り物が普及するためには、安全性の確保が不可欠です。利用者自身の交通ルール遵守はもちろん、歩行者や他の車両と安全に共存できる環境が必要です。例えば、特定原付が走行すべき車道と、歩行者が優先される歩道との線引きや、専用レーンの整備など、インフラ面の整備も重要な課題となります。また、万が一の事故に備えるための保険制度の確立も、安心して利用できる社会を築く上で欠かせません。保険加入の義務化や、事故発生時の対応フローの明確化が求められています。
自動運転技術との融合と未来の展望
パーソナルモビリティの未来を語る上で欠かせないのが、自動運転技術との融合です。すでに一部では、自動で利用者の元へ迎えに来たり、障害物を避けながら走行したりする技術開発が進められています。将来的には、高齢者が自宅から目的地まで、操作することなく安全に移動できるような、完全自動運転のパーソナルモビリティが登場するかもしれません。これは、移動の支援という側面をさらに強化し、誰もが移動の恩恵を受けられる未来を創出します。
パーソナルモビリティは、単なる移動手段に留まらず、地域の活性化や新しいライフスタイルの創出に貢献する可能性を秘めています。私たちの移動をより自由で、より豊かに変えてくれる存在として、今後の進化から目が離せません。
パーソナルモビリティ(特定原付)に関するよくある質問(FAQ)
Q. パーソナルモビリティ(特定原付)に免許は必要ですか?
A. 2023年7月1日に施行された道路交通法により、「特定小型原動機付自転車(特定原付)」に分類される電動キックボードなどは、16歳以上であれば運転免許不要で乗ることができます。ただし、すべてのパーソナルモビリティが免許不要というわけではないため、購入・利用する際には必ずその車両の区分を確認することが重要です。区分によって必要な免許や走行場所が異なります。
Q. ヘルメットの着用は義務ですか?
A. 特定原付の場合、ヘルメットの着用は「努力義務」とされています。つまり、着用しなくても罰則はありませんが、安全のために着用が強く推奨されています。万が一の事故から命を守るため、乗車時にはヘルメットを着用することを習慣づけましょう。努力義務とはいえ、安全への配慮は不可欠です。
Q. 雨の日でも乗れますか?
A. 機種によりますが、多くのパーソナルモビリティは一定の防水性能を備えています。しかし、雨の日は路面が滑りやすく視界も悪くなるため、運転には通常以上の注意が必要です。特に、タイヤが小さいためスリップしやすく、ブレーキ性能も低下する可能性があります。安全を最優先し、防水性能の高いモデルを選ぶか、なるべく雨の日の利用は避けるのが賢明です。
まとめ:パーソナルモビリティとは、私たちの移動を革新する鍵
この記事では、「パーソナルモビリティとは何か」という基本的な問いから、その種類、注目の特定原付、そして未来の展望までを詳しく解説しました。
- パーソナルモビリティは、高齢化社会や環境問題に対応する、個人のための新しい電動移動手段。
- 中でも「特定原付」は、免許不要で乗れる身近な存在として急速に普及が進んでいる。
- パーソナルモビリティは、地域の移動課題を解決し、人々の生活の質(QOL)を高める可能性を秘めている。
- 安全な利用のためには、法規制の理解と交通ルールの遵守が何よりも重要。
パーソナルモビリティは、私たちの生活をより便利で豊かにする大きな可能性を秘めています。この記事を読んで、もしあなたが「自分も乗ってみたい」と感じたなら、それは新しい移動体験への第一歩です。まずは、どのような機種があるのか、下の比較ツールで探してみてはいかがでしょうか。あなたのライフスタイルにぴったりの一台が、きっと見つかるはずです。
特定小型原動機付自転車についての外部リンク
特定小型原動機付自転車について
- 特定小型原動機付自転車について(国土交通省)
- 特定小型原動機付自転車について(経済産業省)
- 保安基準に適合した電動キックボード等を購入・使用しましょう(国土交通省)
- 特定小型原動機付自転車ってなに?(PDF)(国土交通省)
- ルールを守って電動キックボードに乗ろう(PDF)(国土交通省)
- 電動キックボード等の概要説明リーフレット(PDF)(警視庁)
特定小型原動機付自転車の交通ルールについて
- 電動キックボードに関する交通ルールを確認しましょう!(政府広報オンライン)
- 電動キックボード等に法改正 乗るならルールを知ってから!(政府広報オンライン)
- 特定小型原動機付自転車に関する交通ルール等について(警視庁)
- 特定小型原動機付自転車に関する交通ルール等について(警察庁)









