
「通勤で毎日持ち運ぶから、とにかく軽いモデルが良い」「階段が多いから重いのは無理」という方にとって、電動キックボードの重量は最も重要な要素の一つです。特に、2023年7月の法改正で誕生した特定小型原動機付自転車(特定原付)のカテゴリでは、公道走行可能でありながら軽量化されたモデルが続々登場しています。
しかし、現行の特定原付のスペック表を精査すると、残念ながら「10kg以下」のモデルはまだラインナップされていません。
そこで本記事では、現行モデルの中で最軽量クラスとなる「10kg台前半」のモデルに焦点を絞り、そのメリット、デメリット、そして法規制を専門的な視点から徹底的に深掘りします。単に軽さを追求するだけでなく、公道で安心して運用できるかを最優先に、あなたの移動を劇的に変える一台を見つけ出すお手伝いをいたします。
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目次
記事の要点まとめ
- 10kg以下の特定原付は未発売:現時点での最軽量クラスは13kg台。軽さを最優先するならこのクラスから選ぶことになる。
- 軽量化のメリットとトレードオフ:持ち運びは劇的に楽になるが、パワーやサスペンション性能が犠牲になる傾向があるため、利用シーンに合わせた見極めが必須。
- 最軽量クラスの代表はRICHBIT ES1 Pro (13.8kg):公道走行に必要な保安基準を満たしつつ、トップクラスの軽さを実現しており、持ち運び重視のベストバイ候補。
- 法規制の遵守が最優先:軽量モデルでも特定原付の保安基準を満たし、ナンバー登録と自賠責保険加入は必須である。
なぜ今「最軽量クラス」の特定原付が求められるのか?軽量化のメリットと利用シーン
メリット1:圧倒的な持ち運びやすさによる移動の自由度向上
電動キックボードの重量が10kg台前半というのは、一般的な成人男性が片手で楽に持ち上げられるレベルです。この「持ち運びやすさ」は、単なる利便性以上の移動の自由をもたらします。例えば、自宅やオフィスビルのエレベーターに乗る際、混雑した電車やバスに乗り換える際に、重いモデル(25kg超など)のように「邪魔になる」というストレスが大幅に軽減されます。
特に、ラストワンマイル(自宅から駅、駅からオフィスなど)の移動に利用する場合、目的地に着いてからの持ち運びのストレスが少ないことは、利用頻度を上げる大きな動機付けになります。また、自宅や駐輪場での縦置き・折りたたみ収納の際も、軽い方が圧倒的に扱いやすいため、生活空間を圧迫しない点も大きな魅力です。
メリット2:保管場所の制約を受けにくい
重量が軽いことは、保管場所の選択肢を広げます。例えば、アパートやマンションの玄関先に置く際、床への負担が少ないことはもちろん、万が一室内に持ち込む場合でも、女性や非力な方でも無理なく移動させることが可能です。シェアサイクルやレンタルサービスでは味わえない、「自分の所有物」として生活に溶け込ませやすいのが、軽量モデルの大きな強みと言えるでしょう。
メリット3:誰でも扱いやすい手軽さが継続利用の鍵
電動キックボードを継続的に利用するためには、乗ることそのものの楽しさに加え、乗るまでの「準備」の気軽さが重要です。重いモデルの場合、乗るたびに「持ち上げて、展開して、ロックを外して…」という一連の動作に心理的な負担を感じることがあります。しかし、軽量モデルであれば、その動作が非常にスムーズで、日常の移動手段として自然に組み込むことができます。これは、専門家として、「乗り物」を「道具」として使いこなす上で非常に重要な要素だと考えています。
軽量モデルを選ぶ前に!特定原付の「必須条件」と「軽さのトレードオフ」を理解する
ポイント1:特定小型原付(特定原付)か?法規制への適合
「軽量」であることと「公道走行可能」であることは、別問題です。日本国内で免許不要(ヘルメット努力義務)で公道を走るためには、そのモデルが国土交通省が定める「特定小型原動機付自転車」の保安基準に適合し、JATA(日本自動車輸送機器協会連合会)などの性能確認機関による確認を受けている必要があります。
軽量モデルの中には、価格を抑えるためにこの保安基準を満たしていない、いわゆる「私有地限定モデル」や「特定原付ではないモデル」が紛れ込んでいることがあります。公道走行の可否は、車両本体の「性能確認済証」や「販売証明書」に記載されている「型式」と「最高速度」で判断されます。軽さだけでなく、必ず公道走行可否の証拠を確認することが、違法走行のリスクを避けるための絶対条件です。
ポイント2:航続距離は実用範囲内か?
一般的に、バッテリー容量を抑えると車体は軽くなりますが、その分、航続距離も短くなる傾向があります。スペック表を見ると、軽量モデルの航続距離は30km前後のものが多いです。これは、片道5kmの通勤であれば往復3日程度は充電不要という計算になり、日常使いには十分です。
しかし、もし週末に少し遠出を計画している場合や、充電環境が不安定な場合は、航続距離50km超えのモデル(例:YADEA KS6 PRO)の方が精神的な安心感は高まります。「軽量だが航続距離は30km」と「少し重いが航続距離は60km」、どちらが自分のライフスタイルに合っているかをシミュレーションすることが重要です。
ポイント3:登坂能力とサスペンションの有無(トレードオフの顕著な点)
軽量化の最大のトレードオフは、多くの場合、モーター出力と足回り(サスペンション)に現れます。軽量モデルはモーター定格出力が350W以下のものが多く、これは勾配のきつい坂道(15度以上など)ではパワー不足を感じる可能性があります。特に、車重が重い方(例:積載重量100kg超)が坂道を登る場合、非力に感じやすいでしょう。
また、サスペンションは、軽量化のために省略されがちなコンポーネントです。サスペンションがないと、タイヤが空気式であっても、路面の小さな段差や振動がダイレクトにハンドルや足に伝わります。通勤路に整備されていない道やブロック舗装が多い場合は、多少重くてもサスペンション付き(例:ZERO 9 Lite)を選ぶ方が、長期的には疲労軽減と安全性の面でメリットが大きい場合があります。
【最軽量クラス比較】特定原付おすすめモデル紹介
ここでは、現行の特定原付の中で、重量10kg台に位置するモデル、特に最軽量クラスのモデルをピックアップし、その特徴を比較します。重量が13kg台〜15kg台のモデルは、軽量化と実用性のバランスが最も取れた「スイートスポット」と言えます。
1. RICHBIT ES1 Pro:最軽量クラスを牽引する高コスパモデル
本記事で最軽量クラスの代表として選出したのが、RICHBIT ES1 Proです。重量は驚異の13.8kg。これは、サスペンションや大型バッテリーを搭載したモデルと比較して、約10kg以上も軽いです。この軽さは、公共交通機関との連携を重視する都市部ユーザーにとって、非常に大きなアドバンテージとなります。
航続距離は公称20kmとやや控えめですが、日常の通勤・買い物用途(片道5km程度)であれば週に1~2回の充電で十分対応可能です。特筆すべきは、その価格帯(実売価格約7万円台)でありながら、特定原付の保安基準をクリアしている点です。ただし、サスペンションはフロント・リアともに非搭載であり、8.5インチのチューブタイヤが標準装備されています。乗り心地は、サスペンション付きのモデルに比べると路面の凹凸を拾いやすいため、舗装路での利用がメインとなる方に最適です。
こんな人におすすめ
- とにかく軽さを最優先し、電車や階段での持ち運びが多い方。
- 日常の利用範囲が片道10km圏内で収まる方。
- サスペンションや大容量バッテリーなどの「重くなる要因」を省きたい方。
【RICHBIT ES1 Proのスペックハイライト】
- 重量: 13.8kg(最軽量クラス)
- 航続距離: 約20km
- タイヤ: 8.5インチ(チューブ)
- サスペンション: 前後なし
2. DAWNER ES-N5:10インチエアタイヤで快適性を確保した軽量モデル
DAWNER ES-N5は、重量15kgと、最軽量クラスに位置する特定原付です。特筆すべきは、この軽さでありながら、前後に10インチの米式エアタイヤを採用している点です。タイヤが大きいほど、また空気式であるほど、路面からの衝撃吸収性に優れ、乗り心地が向上します。これは、サスペンションが非搭載の軽量モデルにおいて、快適性を確保するための重要な工夫と言えます。
航続距離は公称25kmと、RICHBIT ES1 Proよりは長いものの、長距離走行には向きません。しかし、日常の移動で多少の段差や荒れた路面を走る機会が多いユーザーにとって、10インチのエアタイヤは、8インチ以下のソリッドタイヤモデルよりも疲労軽減と安定性の面で大きなメリットをもたらします。都市部の通勤・通学で、軽さと走行の快適性のバランスを重視したい方におすすめです。
こんな人におすすめ
- 軽さを重視しつつ、走行時の安定性や乗り心地も確保したい方。
- 10インチのエアタイヤによるクッション性を最優先する方。
- 日常の利用範囲が短〜中距離(片道10km程度)に収まる方。
【DAWNER ES-N5のスペックハイライト】
- 重量: 15kg
- 航続距離: 約25km
- タイヤ: 10インチ(米式エアタイヤ)
- サスペンション: 前後なし
3. SAVEWO DASH F:驚異の15.5kgでスポーツ性も追求
SAVEWO DASH Fは、重量が15.5kgと軽量ながら、最高速度が20km/hのスポーツモードも備え、登坂角度が16度と、このクラスでは比較的パワフルなモデルです。フレーム素材に高強度のアルミニウム合金と鋳鉄の複合フレームを採用しており、軽量化と剛性のバランスを取っています。
タイヤは8インチの無空気式クッション入りタイヤを採用しており、エアタイヤのようなパンクの心配がなく、ソリッドタイヤよりも振動吸収性に優れている設計です。サスペンションは非搭載ですが、タイヤの特性と軽量性により、都市部でのキビキビとした走りを求めるユーザーに適しています。航続距離は30kmで、実用性も確保されています。
こんな人におすすめ
- 軽量でありながら、坂道でのパワー不足を懸念している方(定格出力350W)。
- パンク修理の手間を避けたいが、乗り心地もそれなりに確保したい方。
- キビキビとした軽快な走りを好む方。
【SAVEWO DASH Fのスペックハイライト】
- 重量: 15.5kg
- 航続距離: 約30km
- タイヤ: 8インチ 無空気式クッション入りタイヤ
- サスペンション: なし
最軽量クラス特定原付3モデルのスペック比較表
| RICHBIT ES1 Pro | DAWNER ES-N5 | SAVEWO DASH F | |
|---|---|---|---|
| 画像 | |||
| 価格 | 69,800円 | 143,000円 | 67,000円 |
| 実売価格 | 61,980円 | 143,000円 | 59,000円 |
| 歩道モード | あり | あり | あり |
| 平均航続距離(km) | 20 | 25 | 30 |
| 重量(kg) | 13.8 | 15 | 15.5 |
| 定格出力(W) | 250 | 350 | 350 |
| 最大出力(W) | 700 | ||
| タイプ | キックボード | キックボード | キックボード |
| 全長(mm) | 1080 | 1170 | 1080 |
| 全幅(mm) | 1140 | 520 | 583 |
| 全高(mm) | 530 | 1180 | 1200 |
| 3辺合計(mm) | 2750 | 2870 | 2863 |
| 折りたたみ全長(mm) | 1080 | 1210 | 1080 |
| 折りたたみ全幅(mm) | 560 | 520 | 583 |
| 折りたたみ全高(mm) | 530 | 515 | 510 |
| 折りたたみ3辺合計(mm) | 2170 | 2245 | 2173 |
| 最大積載重量(kg) | 100 | 100 | 100 |
| 駆動方式 | 前駆動 | 後輪駆動 | 前輪駆動 |
| バッテリー電圧(V) | 36 | 36 | 36 |
| バッテリー容量(Ah) | 7 | 7.5 | 7.8 |
| バッテリー着脱 | 不可 | ||
| バッテリー平均充電時間(h) | 4 | 5.5 | 4 |
| 最高速度車道(km/h) | 20 | 20 | 20 |
| 最高速度歩道(km/h) | 6 | 6 | 6 |
| 登坂角度(度) | 16 | ||
| 走行モード | 車道/歩道 | 車道モード:20km/h/歩道モード:6km/h | 歩道モード(6km/h)、快適モード(20km/h)、スポーツモード(20km/h) |
| フレーム素材 | 高強度のアルミニウム合金と鋳鉄複合フレーム | ||
| カラー | アーバンブラック、シルクホワイト、アーミーグリーン、セレストブルー、ビビッドピンク | カーボンブラック | |
| タイヤサイズ(inch) | 8.5 | 10 | 8 |
| タイヤ種類 | チューブタイヤ | 米式エアタイヤ | 無空気式クッション入りタイヤ |
| ブレーキ前輪 | ディスクブレーキ | ドラムブレーキ | 電動ブレーキ |
| ブレーキ後輪 | ディスクブレーキ | 電動ブレーキ | ディスクブレーキ |
| サスペンション前輪 | あり | ||
| サスペンション後輪 | |||
| 防水防塵等級 | IP54 | ||
| 折りたたみ機構 | あり | あり | あり |
| サドル(椅子) | オプション | なし | なし |
| カゴ | |||
| バックミラー | オプション | なし | なし |
| 防犯装備 | |||
| アプリ連携 | |||
| 保証期間 | 6ヶ月 | 6か月間 | |
| 付属品 | 充電器・簡易工具・説明書 | 充電器・取付ネジ・簡易工具・説明書 | 充電器一式、整備用工具(マルチツール)、取扱説明書、販売証明書 |
| 確認番号 | 0025 | 0074 | 0023 |
| メーカー | RICH BIT | 株式会社イーモビ | SAVEWO |
| 型式 | ES1-Pro | ES-N5 | SAVEWO-ES- DASH-F |
| 公式サイトなど | https://ali-jp.com/product/richbites1pro/ | https://e-mobi.jp/dawner/ | https://savewo.com/energy/jp/dash-scooter/dash-f/ |
| 購入先 | 楽天市場で見る公式ショップで見るメルカリで見る | 楽天市場で見るメルカリで見る | 楽天市場で見るメルカリで見る |
軽量モデルの不安を解消!特定原付に関するよくある質問(FAQ)
Q. 軽量モデル(15kg前後)は坂道に弱いですか?
A. モーターの定格出力によりますが、一般的に15kg前後の軽量モデルは、パワー重視のモデル(500W以上)と比較すると、坂道でのトルクが弱く感じられることがあります。特に、積載重量が重い方や、勾配15度以上の急坂を頻繁に利用する場合は、定格出力350W以上のモデル(例:DASH Fの350Wや、それ以上のモデル)を選ぶことを推奨します。純粋な重量だけで判断せず、「モーター出力」と「登坂角度」のスペックも必ず確認してください。
Q. 歩道走行モード(6km/h)は常に使えますか?
A. 特定原付として保安基準を満たしているモデルであれば、車道走行モード(20km/h)と歩道走行モード(6km/h)の切り替え機能が必要です。この切り替えは、多くの場合、本体の操作パネルやリモコン、アプリなどで行います。歩道走行モードは、歩行者と同じ速度域であるため安全性が高いですが、歩道での利用が許可されているのは、特定原付の要件を満たしているモデルのみです。歩道走行時は必ず6km/h以下に制限され、歩行者の通行を妨げないよう配慮する義務があります。
Q. 軽量モデルでも防水性能は十分ですか?
A. 防水防塵等級(IP等級)は、車体の軽量化とは直接関係なく、メーカーの設計思想に依存します。軽量モデルでもIPX5やIPX4といった高い防水性能を持つものが多いですが、IPX5(防噴流形)以上であれば、多少の雨天走行や水たまりの通過にも耐えられる設計とされています。ただし、バッテリーの接続部や電子部品への浸水は故障の最大の原因となるため、大雨の日は極力乗らない、乗った後は水分を拭き取る、といった基本的なセルフメンテナンスが重要です。特にバッテリーが着脱可能なモデルは、バッテリー接続部の防水対策が重要になります。
Q. どこで試乗・購入できますか?
A. 軽量モデルは、実店舗の在庫として並びにくい場合があります。ビックカメラなどの大手家電量販店では人気モデルが展示されていることが多いですが、特定モデルの在庫状況は店舗によります。最も確実なのは、SWALLOWや専門のオンラインストア(例:RICHBITの公式ショップ)での購入です。購入の際は、前述の通り、必ず性能確認済証の有無を確認し、信頼できる国内代理店や販売店から購入するようにしてください。万が一の際のアフターサポートや部品供給の面で安心感が大きく異なります。
まとめ:軽量性と実用性のバランスを見極め、最適な一台を選ぼう
「電動キックボード 10kg以下」というニーズは、移動の自由度を求める現代の都市生活者にとって非常に現実的な要望です。残念ながら現時点では10kg以下のモデルは存在しませんが、RICHBIT ES1 Proに代表される13kg台の最軽量クラスは、持ち運びのストレスを最小限に抑えつつ、特定原付としての公道走行要件を満たす、極めてバランスの取れた選択肢です。
重要なのは、軽さ(持ち運び)、航続距離(実用性)、そしてサスペンション(快適性)の3つの要素の優先順位を決めることです。もし、持ち運びが最優先で、坂道や荒れた道は避けるのであればES1 Pro、少し重くなっても10インチエアタイヤで快適性を重視するならDAWNER ES-N5がおすすめです。(※DAWNER ES-N5はサスペンション非搭載ですが、10インチの米式エアタイヤでクッション性を確保しています)
最終的な購入判断の前に、必ず【特定原付の保安基準適合】と、【販売店・メーカーのサポート体制】を確認してください。これらの情報を踏まえれば、きっとあなたの日常の移動を快適に変える一台に出会えるはずです。
特定小型原動機付自転車についての外部リンク
特定小型原動機付自転車について
- 特定小型原動機付自転車について(国土交通省)
- 特定小型原動機付自転車について(経済産業省)
- 保安基準に適合した電動キックボード等を購入・使用しましょう(国土交通省)
- 特定小型原動機付自転車ってなに?(PDF)(国土交通省)
- ルールを守って電動キックボードに乗ろう(PDF)(国土交通省)
- 電動キックボード等の概要説明リーフレット(PDF)(警視庁)
特定小型原動機付自転車の交通ルールについて
- 電動キックボードに関する交通ルールを確認しましょう!(政府広報オンライン)
- 電動キックボード等に法改正 乗るならルールを知ってから!(政府広報オンライン)
- 特定小型原動機付自転車に関する交通ルール等について(警視庁)
- 特定小型原動機付自転車に関する交通ルール等について(警察庁)








